リゾバの記憶2~年下の派遣さんが消えるまで1~
石垣の離島でのリゾートバイトは、良いことも悪いことも盛りだくさんだった。
私が派遣で定められた期間を終える直前、4つほど年下の未成年の男の子が販売部に派遣としてやってきた(名前をムラタとでもしておく)
働く現場があまり近く無いため、名前を聞いたことしかなかった。
ある日、販売部のリーダー的存在の友達と仕事後に鍋をしていた。
私の地元である広島から牡蠣が送られてきたので、一緒に牡蠣を入れてキムチ鍋を作った。
余談だけど、食わず嫌いで牡蠣を食べたことが無いというその子は牡蠣の美味しさに対する期待よりも、ノロウィルスへの恐怖が勝ったようで、手の平半分ほどの大きさだった牡蠣を小振りのしじみ程度のサイズになるまで煮込んでしまっていた。
泡盛を飲みまくってさんざん酔っぱらってたので、
「お前…自分の金玉をこんなに縮こまるまで煮込まれたらどう思う?」
と聞いてしまった。
小さな牡蠣を内心もったいないと思いつつ、ももやのキムチ鍋の素がめっちゃ美味しかったので二人でヤバイヤバイと言いながら食べてるとき、おもむろに友達が言った。
「ねぇ、ムラタってわかる?」
「こないだ来た若い男の子?どうかしたの?」
「いや、すごい言いづらいんだけど…お客さんから、臭いってクレームが何件も入ってて…」
「えっ…?!」
どうやら、体臭がきつくてお客さんから本部にクレームが入り、そのクレームが販売部のリーダーである友達にも伝わった模様。
時々、あ、この店員さんちょっと匂いが…?と思うことは買い物や外食をしてるときに稀にあったりする。
が、その頃に「魚臭症」というどれだけ対策しても体から異臭を放ってしまう病気にかかってる方のドキュメンタリーを見ていたので、わざとでない限り人の匂いについてあれこれ考えるのはやめようと思っていた。
だからムラタ君に関しても、なんて言おうか迷ったけど、そもそも匂いでクレームが何件もくるということが異常な気がしたので私はそこを重く受け止めた。
「ムラタ君には言ってあるの?普通店員さんの匂いにクレームなんて出さないよ。そんなに酷いの?」
「うん…。ムラタにも、こないだタナカさん(上司)が言ったみたい…。すごい言いづらそうだったよ」
あ、もう言ったんかい。
というかタナカさんも気の毒だ。
「ムラタくん何て?」
「何も言わなかったけど、落ち込んではいたよ」
そりゃそうだろうな…。
私もそんなことを言われたら落ち込むし、それが社内の人から出たクレームじゃなくて、お客さんからのクレームってところで更にへこむだろう。
「でも問題はさぁ」
まだあんのかよ!
「匂いが改善されないんだよ…」
「………」
ガララッ!
???「お~!二人で何してんの!!?俺も混ぜて!」
②に続く。